幸せな別れ
2015年2月8日午前中のこと。1月まで勤務していた校舎に出向く。
中学受験界では、2月から学年が変わる。既に新たな校舎(複数)への配属が決まっていた俺は、単に私物の回収とスタッフ達への挨拶のため、旧勤務先に赴いたのだった。
ところが、である。
校舎に入るやいなや、わっと10人ほどの子供たちに囲まれる。俺がついこの間まで担当していた小6生達だ。入試も終わった今、何故お前達がここに?訳もわからぬまま、皆の口から発せられる「先生、ありがとうございました!」の声。ひとりひとりと握手を交わす。もちろん「おめでとう」の一言を添えて。
聞いてみれば、俺が来る日時を校舎に問い合わせて、皆で待ち合わせていたらしい。ありがたいことだ。講師冥利に尽きる。
そして、俺に手渡されたのは、暖かいことばに満ちた寄せ書きと、何やらお洒落な包装紙に包まれたプレゼント。中から出てきたのは、本革製の立派なブックカバー。富裕層の多い地域とはいえ、小学生が易々と買えるものではないはず。
聞いてみると、お年玉から、入試終わったご褒美にもらったお小遣いから、皆でお金を出しあって買ったのだという。
...お前達。最後の最後に俺を泣かせるな...。寄せ書きとブックカバーを胸に抱いて、涙声で皆に伝える。
「宝物にするよ。10年先も、20年先も、ずっと。ありがとう...ありがとう」。
その後、ひとりひとりと記念撮影をして、本当のお別れの時が来た。
ほんとうに、ことばの真正な意味で、幸せな別れというものもあるのだ。この仕事を始めて久しいが、これほど幸せなことは、これまでになかった。
だが。
この幸せな別れのかげには、無数の無念の涙がある。
決して、そのことを忘れはしない。否、忘れてはならない。
そんな思いを胸に、午後からの新たな校舎での仕事に向かうべく、俺は電車に飛び乗った。
中学受験界では、2月から学年が変わる。既に新たな校舎(複数)への配属が決まっていた俺は、単に私物の回収とスタッフ達への挨拶のため、旧勤務先に赴いたのだった。
ところが、である。
校舎に入るやいなや、わっと10人ほどの子供たちに囲まれる。俺がついこの間まで担当していた小6生達だ。入試も終わった今、何故お前達がここに?訳もわからぬまま、皆の口から発せられる「先生、ありがとうございました!」の声。ひとりひとりと握手を交わす。もちろん「おめでとう」の一言を添えて。
聞いてみれば、俺が来る日時を校舎に問い合わせて、皆で待ち合わせていたらしい。ありがたいことだ。講師冥利に尽きる。
そして、俺に手渡されたのは、暖かいことばに満ちた寄せ書きと、何やらお洒落な包装紙に包まれたプレゼント。中から出てきたのは、本革製の立派なブックカバー。富裕層の多い地域とはいえ、小学生が易々と買えるものではないはず。
聞いてみると、お年玉から、入試終わったご褒美にもらったお小遣いから、皆でお金を出しあって買ったのだという。
...お前達。最後の最後に俺を泣かせるな...。寄せ書きとブックカバーを胸に抱いて、涙声で皆に伝える。
「宝物にするよ。10年先も、20年先も、ずっと。ありがとう...ありがとう」。
その後、ひとりひとりと記念撮影をして、本当のお別れの時が来た。
ほんとうに、ことばの真正な意味で、幸せな別れというものもあるのだ。この仕事を始めて久しいが、これほど幸せなことは、これまでになかった。
だが。
この幸せな別れのかげには、無数の無念の涙がある。
決して、そのことを忘れはしない。否、忘れてはならない。
そんな思いを胸に、午後からの新たな校舎での仕事に向かうべく、俺は電車に飛び乗った。
コメント