木~日まで労働Rush&学会行事でスロットは打てない(打たなくて済む、というべきか)。

電車での移動時間が非常に長くなるため、都合のよい暇つぶし手段を求めていた。専門誌とか論文の類は、ダメだ。降車駅までの限られた時間ではキリのいいところまで読めない。何より移動中くらい気を休めたい。で、見つけたのがコレ。ここ数年の出版業界の事情にはとんと疎いのだけど、驚異的に売れてるようだ。ラノベっぽい表紙だが、一般文庫の棚に平積みされている。帯を見る限りファンタジー的要素のない、ごくふつうのミステリーらしい。何にせよこのレーベルで200万部は奇跡。さぞ面白いに違いない。わくわく。
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…物事を酷評するのはあんまり好きじゃない。粗探しは誰にでも出来ることだ。碩学の言説に対して、2ちゃんねるあたりの住人がアレやコレやとケチつけてるのを見るにつけ、イヤーな気分にさせられる。筆者はそういう性分の持ち主だ。「評論家の銅像など存在しない」とは誰のことばだったか…。失念してしまったが、至言である。
だが敢えて言わせていただくと

たいしておもしろくねぇなぁ、これ。端的に言って、栞子さん(ヒロイン)の言動で場をつないでるだけ。各エピソードの練り込みの浅さは如何ともしがたい。相当無理のある、こじつけ的な謎解きも多々。
※追記:読んだ人にしか分からないネタで恐縮だが、一例を。新潮文庫のスピン(紐型栞)は小学生の力でも簡単に抜けるor千切れる。
そもそも栞子さんのキャラ付けがあまりにも「狙い過ぎ」である。特定の男性読者層の幻想にべったり媚びる姿勢だけは、ラノベを踏襲している。

しかし、この本が200万部売れたというのは紛れもない事実。かつて出版社に勤務していた者なりに理由を考えてみる。
結論からいうと…表紙、だな。表紙に描かれた栞子さんの可愛い絵。深夜アニメほどのあざとさがなく、すっきりとした清楚な絵。表紙が白紙だったら、おそらく1/10も売れてない。

ちなみに私が出版社に勤務していた時分、表紙のデザインに気を配ることはほぼ皆無だった(本当です)。学術書・専門書の表紙をいじったところで、部数がどうにかなるものではない。学術書らしく硬質なデザインがなされていれば、取り立てて問題はなかった。一般書の世界は、怖い。

先に述べたとおり、本作のヒロイン栞子さんのキャラ設定は、「オタク的な幻想をざっくりなぞった」ものである。一方で本作はファンタジー色のないミステリであり、尚且つ表紙絵も一般人からみて「可愛い」「清楚」と受け取ってもらえる性質のものであった。尚且つ彼女の年齢は二十代半ばに設定されており、幾分「現実的」である。

200万部という数字は、一般層に受け容れられなければ達成できるものではない。本作はオタクと一般層、両者の生理の乖離の隙間を見事に縫った。それが本作の商業的成功の最大の要因と思料する。

蛇足ながらもうひとつ。俺にとってはただただ鼻につくものでしかなかった栞子さんのキャラ、一般層にはごく普通に受け入れられているようだ。何と言っても200万部である。従来のオタク向け市場には、まだまだ拡大の余地が残されていそうである。

コメント

ななし
2012年4月15日13:54

自分も読みましたけど、言われてみればそうかもしれないですね。

どっちかっていうと今まで古本屋ってどうやって生計を立ててるんだろうと思ってた部分があったんですが、これ読んで(本当かどうかまで調べてないですけど)古書に価値があるものがあるってことに関心しながら読んでましたね。

先生様
2012年4月16日0:56

〉古書店
個人営業の古書店の売上の概ね90%以上は通販によるものです。アマゾンが出来る遥か以前から変わりません。ついでに、店舗ごとに得意なジャンルが異なりますので、神田とか早稲田みたいな密集地でも共倒れになりにくいのも大きいかと。
店主の道楽でやってるような店も結構ありますが。

パリジェンヌ田吾作。
2012年4月16日10:36

ビブリア堂は、幼女出てこないからな~。
(読書感想文で出て来たかしら…。)

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